子宮頸がんは、女性の生殖器官である子宮の頸部に発生するがんです。このがんは、通常ヒトパピローマウイルス(HPV)感染によって引き起こされます。HPVは性的接触を通じて感染し、頸部の細胞に異常を引き起こすことがあります。子宮頸がんは早期段階ではほとんど症状が現れず、検診による早期発見が非常に重要です。
子宮頸がんは、女性のがんの中でも最も一般的なものであり、特に若い女性に多く見られます。近年では、20代での発症数が増えており、発症のピークは30代後半~40代前半となっています。
その発症にはいくつかのリスク要因が関与しています。性的活動の開始時期が早い、複数の性パートナーを持つ、喫煙、免疫機能の低下などがリスクを高める要因とされています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性行為を通じて感染するウイルスであり、子宮頸がんを含むさまざまながんや性器疣贅(尖形コンジローマ)の主要な原因として知られています。HPVは、皮膚や粘膜に感染し、細胞のDNAに異常を引き起こすことでがんの発生を促す可能性があります。
HPVには100以上の異なるタイプがありますが、その中でも高リスク型と低リスク型に分類されます。高リスク型HPVは、子宮頸がんを含む一部のがんの発症リスクを増加させます。
HPVへの感染は、性行為の経験がある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされています。HPVに感染しても、ほとんどの場合免疫により自然にウイルスを排除しますが、一部の割合で、ウイルスが排除されずに感染が持続し、がんの発症リスクが高まることがあります。
子宮頸がんは早期の段階では、ほとんど症状が現れません。
そのため、定期的な検診が重要であり、早期発見が最も重要です。
進行段階になると、以下のような症状が現れることがあります。
まず、異常な出血が一つの兆候です。通常、月経周期外に出血がある場合や月経量が通常よりも多くなる場合は注意が必要です。また、性交時に出血や不快感があることもあります。
さらに進行すると、排尿や排便に関連した症状が現れることがあります。排尿時に痛みや刺激を感じること、尿道からの出血、腰や骨盤周辺の痛み、排便時に血液が混じることなどがあります。
また、身体的な変化も現れる可能性があります。
例えば、体重の減少や食欲不振、疲労感や体のだるさが継続的に現れることがあります。また、腰や脚の腫れや痛み、下肢のしびれ、リンパ節の腫れなども注意が必要な症状です。
子宮頸部細胞診
細胞診とは、子宮頸部の細胞を専用のブラシでこすって採取する検査です。採取した細胞を色素で染め、顕微鏡で異常な細胞がないかを調べることによって、子宮頸がんのがん細胞だけでなく、異形成の細胞も発見できます。検査は一般的に痛みを伴わず、数分で終わります。
ヒトパピローマウイルス(HPV)検査
子宮頸部の細胞を採取して、HPVに感染しているかどうかを調べる検査です。上記の細胞診と併用することで、子宮頸がん検診の精度を高めることが可能です。
コルポスコピー検査(膣拡大鏡検査)
細胞診にて異常がみられた場合に行う検査です。コルポスコープという拡大鏡を使用して、子宮頚部を詳しく観察し、異常な領域を特定していきます。
症例 16例
IA1期 1例、IB1期 3例、IB2期 1例、IB3期 1例、IIA2期 1例、IIB期 1例、IIIA期 1例、IIIC1期 2例、IIIC2期 2例、IVB期 2例、再発 1例。
治療実績(重複治療を含む)
腹式広汎子宮全摘術 5例、腹腔鏡下子宮摘出術 2例、放射線療法 11例、化学療法 2例。
子宮頸部異形成に対する子宮頸部円錐切除術 54例。
治療方法の選択については、子宮頸癌治療ガイドラインに準拠して実施しています。
子宮頸がんの治療には、①手術②放射線療法③化学療法があり、それぞれ治療後の注意事柄があります。
①手術、特に広汎子宮全摘術を受けられた場合、排尿に関わる神経へのダメージにより排尿障害が生じることがあります。また、骨盤リンパ節郭清による下肢リンパ浮腫の発症に注意が必要です。排尿障害については神経温存手術を心がけていますが、排尿障害が生じた場合、泌尿器科と協働のもと投薬や自己導尿指導を行っています。下肢リンパ浮腫予防のため術後からリハビリテーションの介入を行っています。
②放射線療法では、治療中は問題なく経過されても、治療後に放射線腸炎や膀胱炎が生じることがあります。下痢、血便・血尿の発症に注意して定期診察を行っています。
③化学療法では、従来一般的に生じていた吐き気やしびれなどに加えて、最近、免疫チェックポイント阻害薬が適応となり甲状腺機能異常・副腎機能低下・糖尿病などの発症に注意が必要となりました。そのため他科および薬剤部と連携し、早期発見と速やかな医療介入に努めています。
これらの治療が若年者に行われた場合、卵巣機能が低下し閉経となることがあります。治療後、更年期症状が生じた場合や、将来の良好な生活の質を維持するためにホルモン補充療法を行う場合があります。
子宮頸がんには、主に2つの予防方法があります。
①HPVワクチンの接種
HPVワクチンは、子宮頸がんの主要な原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)感染を予防するために開発されたワクチンです。若い女性や男性に推奨されており、性行為を始める前に接種することが望ましいと考えられています。
②定期的な子宮頸がん検診
がんの早期発見、早期治療を行うためにも定期的な検診が必要です。たとえHPVワクチンを接種していたとしても、子宮頸がんを発症する可能性はあるため、定期的な検診を受けましょう。
また、上記2つ以外にも、健康的な生活習慣は免疫機能を強化し、がんの発症リスクを低減するのに役立ちます。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスの管理などが重要です。
Q.子宮頸がんは遺伝しますか?
ほとんどの子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因で発症します。HPV感染は、性交渉で生じます。子宮頸がんは遺伝性疾患ではありません。
Q.子宮頸がんは治る見込みはありますか?
子宮頸がんが初期の場合、治る見込みは高いですが、進行した場合、治る見込みは低下します。病気の進行度を示す病期での5年生存率は、1期(病巣が子宮頸部に現局している) 90~95%、2期(病巣が腟壁や子宮頸部の支持組織に広がっている) 70~80%、3期(病巣が骨盤に達するまで広がっていたり骨盤のリンパ節に転移している) 50~60%、4期(病巣が膀胱や直腸に広がっていたり肝臓や肺に転移している) 20~30%です。
Q.子宮頸がんの検診はどの程度の頻度で受ければいいでしょうか?
20歳以上の女性は、2年に1回検診を受けてください。
Q. 子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)を接種すれば子宮頸がんにはならないのでしょうか?
残念ながらワクチン接種だけでは子宮頸がん予防は不十分です。ワクチン接種したうえでがん検診を受けていただくことを勧めます。これまでスウェーデンとデンマークからHPVワクチンの子宮頸がん予防効果について、17歳までにワクチン接種すると子宮頸がんの発症率が86~88%減少したと報告されています。
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)は、何歳で接種するのがいいのでしょうか?
HPVワクチンを接種した年齢が若いほど子宮頸がんの発症率は低下します。前質問の解答のように17歳までに接種することが望ましいです。17~30歳でHPVワクチン接種を受けた女性では子宮頸がんの発症率減少効果は53%でした。
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)は、何回受けるのが適切ですか?また、どのくらいの時間を開けて、接種すればいいのでしょうか?
HPVワクチンは、2価、4価、9価ワクチンの3種類があります。接種方法は、2価ワクチン(製品名サーバリックス)では初回、1か月後、6か月後の計3回です。4価ワクチン(ガーダシル)では初回、2か月後、6か月後の計3回です。9価ワクチン(シルガード9)では、15歳未満で受ける場合、初回と6か月後の計2回で、15歳以降で受ける場合、初回、2か月後、6か月後の計3回です。
子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)は保険が効きますか?
HPVワクチンは、定期接種として小学校6年~高校1年相当の女子が公費で接種可能です。定期接種対象以外の年齢の場合、保険は効かず自費負担となります。
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